東北大学病院 未来医療人材育成寄附部門

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WHY SENDAI, WHY THU?

WHY SENDAI, WHY THU?

なぜ仙台・東北大学病院で
未来医療人材を育成するのか?

FEATURE 01

東北は日本の縮図、課題の先端地域

世界で亡くなる人のうち、生活習慣病やがん、呼吸器疾患などの非感染症疾患(non communicable disease)で亡くなる人の割合は7 割にもおよびます。こうした疾患は病院にいって抗生剤を投与する、あるいは、ワクチンを打って隔離して治療する、という性質のものではありません。生活を変容させなければいけないもの、つまり病気と対峙する場所が病院から地域や家にうつり、そして、医療プロフェッショナルによる介入要素が減り、個人がかかわる部分が一段と大きくなります。したがって、家や地域で病気を治そうとするアプローチ、慢性疾患と付き合いながらも自分らしく日常生活を送り続けようとするアプローチは、行政、アカデミア、企業が領域を超えて手を携え、地域事情に合ったさまざまなソリューションを生み出すことが必要になってきます。
日本の総人口のうち65 歳以上の人の割合は28.1%(2019 年)と世界で最も高く、中でも東北地方は過疎化と高齢化が著しく、世界がこれから直面することになるさまざまな医療課題を真っ先に経験する課題先進地域とも呼ばれています。課題の先進地域だからこそ、課題の本質に触れ、エレガントに解決するソリューションを生み出すことができれば、今後世界各地に応用できる先進的なソリューションが生まれる可能性がでてくるものと思われます。

FEATURE 02

課題はend to end で観察しないと本質に迫れない

私たちの生活環境が豊かになったことに加えて、少子高齢化をはじめとするさまざまな社会的変化、ひとびとの考え方の変化、利用可能なテクノロジーの変化に伴うニーズの変化が急加速したことでサービスの多様化が求められるようになりました。また、VUCA という言葉で表せるように、あらゆることがどんどん移ろい、確実なことはなくなり、複雑であいまいな状況では、従来の仮説検証型のアプローチでは問題の解決が追いつかなくなってしまいました。「モノ」を作っただけで終わりという時代は過去となり、ユーザーの視点に立ち、モノだけではなく「体験」を作る時代に移り変わりました。この時代の急激な流れの変化もあり、ユーザーの体験を作るデザイン思考をはじめとする視点・手法が用いられるようになってきています。
デザイン思考はもちろんですが、ユーザーに手にしたときにはじめて「こんなものが欲しかった!」といわれるものを作り出すためには、まずターゲットを観察し、ターゲットの事を理解し、ユーザーが何を求め、何を考えているかといったニーズを探索することが重要です。ターゲットの観察においては、たとえば大学病院での手術、といったスポットでの観察ではなく、発症から診断、治療、そしてまたもとの生活を取り戻していく一連の流れ(health continuum)を理解することが重要です。

FEATURE 03

医療・ヘルスケアの課題を現場で観察できるインフラ

東北大学病院では、2014 年より東北大学病院ベッドサイドソリューションプログラム アカデミック・サイエンス・ユニット(ASU)を開始しました。スタートしてからの6 年間で46 社、1,400 名以上の開発研究に携わる方々を契約ベースでベッドサイドに受け入れてきました。この開発研究者を病院全体でサポートし、多くの医療従事者がコミットしました。参加企業と医療従事者とのニーズ探索が共同研究に発展した事例やいくつかの事業化も出ています。私たちは医療・ヘルスケアの現場観察から事業化という形で多くの人たちに製品、サービスを届けてより健康で幸せになってもらうまでのプロセス全体をデザインするプロセスデザインに重点を置いた取り組みを推進しています。

FEATURE 04

仙台、東北大学病院は課題のショーケース

常にユーザー視点を持ち、ターゲットの目線で考えながら観察するだけでなく、ユーザーインタビューやユーザーテストを繰り返し行い、実際にサービスを利用したユーザーの体験を通してはじめて課題の本質に迫ることができるのです。東北大学病院のASUだけでなく、仙台市も行政をあげて地域特有の課題を現場観察し、ソリューションを多業種で連携して創出する試みであるヘルステック事業を行うなど、課題をしっかりと理解し、ソリューションを皆で協力して生み出すショーケースとなるための取り組みを産学官一体となって進めています。

FEATURE 05

医療・ヘルスケアの現場に近いところでプロセスデザインを行う

東北大学病院では、旧病床機能をOPEN BED Lab(OBL)研究開発実証フィールドとして企業に提供し、医療現場の視点を取り入れた共同研究開発を実施しています。企業の方々が医療プロフェッショナルと一緒に、ASU で探索した課題の次のステップとして、また、新しいテクノロジーを医療現場に導入する意味があるかの判断、あるいは導入の前段階のテストサイトとして、医療現場に最も近い環境で、同じ視点で、新たな医療機器やシステム・サービスなどのコンセプトを実証段階に展開するための試行錯誤をしていただくテストイトとしてご利用いただいています。このように東北大学病院では、課題の探索から事業化に向けた一連のプロセスをデザインするところから実施するところまでをサポートする体制が整備されています。